『夜は短し歩けよ乙女』で知られる小説家・森見登美彦がブログで結婚を発表
http://news.mixi.jp/view_news.pl?id=716162&media_id=54
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なんというタイムリーなニュースだろうか。
祝いの言葉として「成就した恋ほど語るに値しないものはない」
を捧げたいと思います。
というわけで本日、「夜は短し 歩けよ乙女」を読んだ。
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「四畳半神話大系」を読み終えた俺が
12/25の文庫化を心待ちにしていた作品である。
ちなみに昨日、3連休を控えた俺が同僚へ仕事を投げ
「俺なりの愛だ」と同僚に告げたところ
別に森見作品など知らない彼に
「そんなもんいらないよ」と素で返された。
中々日常会話でも使いやすいな、これは。
名古屋セントラル病院の受付待ち中に購入し、
年末に京葉線で海浜幕張から東京へ向う電車の中で
読んだりした一幕もあったものの、
やはり病院の診察待ちで呼んだ時間が一番長い。
そうでなくても最初から最後まで読んだ間中
風邪の神様に取り付かれていたという事実は興味深いものだろう。
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「黒髪の乙女」たる後輩に夢中の「私」は、
彼女とお近づきになるべく、外堀を壮大に埋め続ける毎日。
ある春の一日も、あくまで彼女を不埒な毒牙から守る為、
後を付けていた。その日から「急接近」というほど急くことなく、
おだやかに埋まっていく堀と距離。
そんな珍妙な大学生活を彩る皆々様。
そして此処は日本。八百万の神様までそれを見守っていて。
酒と夜と神と恋が四季折々咲き乱れ、吐くのは灼熱の息と桃色吐息。
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俺が何か取り立ててて書かなくても
主要な論評は既に出ているわけだが。
http://www.kadokawa.co.jp/sp/200611-07/
それでも重複箇所があることも承知で述べさせてもらえば、
やはり舞台と登場人物の個性が魅力的。
「戯言シリーズ」でも一部独特の「京都感」が
魅力の一つであったような気がするのだが、
これもまたそういう作品であると思う。
別に京都弁も舞妓さんも出てこないが、
出てくる地名は紛れもなく京都のそれであり、
ソウルサバイバー・フロムキョウトシティといった感じである。
もちろん作者お得意の森見節というべき
主人公の心理描写は健在。
モテない男の思考回路なんてものは大筋では一緒なのである。
理性はある。だが性欲だってある。
小器用な連中を見下す矜持だってある。
でもどこかで悔しくて情けない。
妄想と空想を繰り返すくせにいざデートともなれば
何を話すんだろう?というところまで想像は働かない。
何故ならデートしたことが生まれてから
一度もない、あるいは青年期に入って初めて、
そんな状態でのシミュレーションだからである。
電話は番号を知るまでが長く、
かけようと思い立ってからまた実行まで長いし、
ここでもほいほいと電話番号を聞ける人間の気が知れぬ。
そういう人間は確実に、割とたくさん、
存在しているのである。
それでも我々は、妄想世界で空を飛び、
我々のような紳士であり真摯であるもののふが
報われないようなこの世界に鉄拳制裁を
「おともだちパンチ」でブチかますべく
今日も生きているのである。
でも女の子から「怒ってる?」
などと聞かれればおともだちパンチすら
振り下ろし「全然別に?」
などと答えるのである。
諸君、異論があるか?
あればことごとく却下だ!